2012/12/28 ベランダで喫煙は違法=階下住民に賠償命令―名古屋地裁 (時事通信記事)
マンションのベランダで吸うたばこの煙が原因で体調が悪化したとして、名古屋市の70代女性が階下に住む60代男性に150万円の損害賠償を求めた訴訟で、名古屋地裁の堀内照美裁判官は28日までに、「受忍限度を超え違法」として5万円の支払いを命じた。判決は13日。
堀内裁判官は「原告が重ねて喫煙をやめるよう申し入れたのに継続した」として女性の精神的苦痛を認定。一方、女性にも一定の受忍義務があるとして、賠償額は5万円が相当と結論付けた。
判決によると、女性は2008年から5階の一室に居住。男性はそれ以前から4階の真下の部屋に住み、ベランダでたばこを吸う習慣があった。女性は10年5月〜11年8月、自分がぜんそくであると記した手紙を送るなどして喫煙をやめるよう求めたが、男性は応じなかった。
2012/12/27 子どもの誤飲、たばこ最多=33年連続、保管に注意を―厚労省 (時事通信記事)
2011年度に子どもが誤って物をのみ込んだ事故のうち、たばこが原因の3割を占めたことが27日、厚生労働省の調査で分かった。調査を始めた1979年度以降、33年連続で最も多く、厚労省は「保管に気を付け、空き缶などを灰皿代わりにしないで」と呼び掛けている。
調査は家庭用品が関係した健康被害を対象に、全国7病院の小児科の報告をまとめた。
報告があった誤飲事故は、前年度から29件減の348件。たばこは25件減の105件だった。うち吸ってないたばこが65件、吸い殻が25件だった。
次に誤飲が多かったのは医薬品・医薬部外品で、2割に当たる73件。子どもが家族の薬をのんでしまう事故が目立った。
年齢別では、生後6カ月から2歳までが誤飲の大半を占めた。
厚労省は事故全体の減少について、少子化や喫煙率の低下が影響したとみている。
2012/12/20 留置施設も全面禁煙=全国で来年4月から―受動喫煙防止・警察庁 (時事通信記事)
警察庁は20日、全国の警察に留置されている容疑者や被告の喫煙を全面的に禁止することを決めた。他の留置人や看守の受動喫煙を防ぐためで、関連規則の改正案を21日に公表、来年4月から施行する。刑務所や拘置所では少なくとも明治時代から認められておらず、警察も留置施設を禁煙にする。
「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」は、留置人が自費で購入して使える物品として、衣類や食料品、日用品、文房具などのほか嗜好(しこう)品を規定。たばこも含まれるが、改正で除外する。
取調室での喫煙は2010年から禁止されており、現在は運動時間に限って自費で購入したたばこを1日2本まで吸える。同庁が今年7月に全ての留置人約1万1600人の実態を調べたところ61%が喫煙者だった。
しかし、運動場は一般的に10〜15平方メートルと狭く、壁が3〜4メートルと高いため、天井がない運動場でも煙がこもりやすい。利用時間を喫煙者と非喫煙者で分けても、「臭いが残っているので運動したくない」「煙が部屋まで流れてくる」という不満が出ていた上、立ち会う看守も受動喫煙にさらされている。
警視庁は4月から、沖縄県警も12月に全面禁煙に踏み切ったが問題は生じておらず、健康保持の観点から全国一斉に禁じることにした。
2012/12/17 ロシア禁煙法、本格審議=来年成立、16年全面実施へ (時事通信記事)
ロシア下院は17日までに、公共エリアでの喫煙やたばこの広告を禁止する包括的な「禁煙法」の審議を開始、第1読会で承認した。ロイター通信によると、2013年春以降に開かれる見通しの第2読会などを経て成立する。16年に全面実施の予定。
英調査会社ユーロモニターによると、ロシアは中国に次ぐ世界第2位のたばこ消費国で、11年の市場規模は220億ドル(約1兆8000億円)。日本たばこ産業(JT)の海外子会社JTインターナショナルを含む外資系たばこ会社がシェアの9割以上を占めており、法案修正のためロビー活動中とされる。
2012/11/30 「世界初」のたばこ箱規制=1日から実施―豪州 (時事通信記事)
オーストラリアでは12月1日から、商品の箱に宣伝色が少しでもあるたばこは販売できなくなる。メーカーにロゴの印刷すら認めない、たばこ箱に関する「世界初」(豪政府)とされる厳しい規制の全面実施で、政府は特に若者らの喫煙開始抑制を狙っている。
新規制下のたばこ箱で商品の違いを判別できるのは、規定の場所に大きさも書体も定められた文字で表示される商品名のみ。箱の印刷は画一化され、喫煙による健康への害をアピールする病変部の写真の割合が以前よりも大きくなっている。
規制の全面実施を前に記者会見したプリバーセック保健相は、喫煙をできる限り魅力のないものにするために政府は取り組んでいると説明。「若者が喫煙に手を出すのを防げれば、それはその人たちへの生涯の贈り物になる」と述べた。
この規制をめぐってたばこ大手は、ロゴなど知的財産上の権利を政府が補償もなく奪うものだとして豪州で政府を相手取って訴訟を起こしたが、敗訴した。同様の規制は、英国などでも検討されており、たばこ大手は規制の世界的拡大に警戒を強めている。
2012/10/09 福島産葉タバコ基準値超え=セシウム検出―JT (時事通信記事)
日本たばこ産業(JT)は9日、2012年産の乾燥葉タバコに対する放射性物質検査を実施し、福島県産の一部で放射性セシウムが同社基準の1キロ当たり100ベクレルを上回ったと発表した。JTは検出された約4.5トン(850万円相当)の購入を取りやめる。福島県では昨年、葉タバコの栽培を見合わせていた。
福島県白河市の旧小野田村の農家3戸で栽培された「バーレー種」の葉タバコに対する検査の結果、110.7ベクレルの放射性セシウムが検出された。福島県のそれ以外の地域は、いずれも100ベクレルを下回った。自主検査で基準値を超えたのは初めて。
このほか、サンプル検査した岩手、宮城、山形、茨城、栃木の各県は昨年に続き基準値未満だった。
JTはさらに、製品化前など3段階で検査を実施する。
※2012年4月から半減期30年の放射性セシウムが含まれているタバコが出荷されています
2012/06/12 たばこ対策―業界より健康重視で (朝日新聞社説)
国民の健康を守るために喫煙率を下げる。国としての数値目標がやっと決まった。
2010年の日本の成人喫煙率は男性32.2%、女性8.4%で、全体では19.5%だ。それを10年後には全体で12%にする。先週閣議決定された、がん対策推進基本計画に盛り込まれた数値目標である。
数値目標の設定は、1999年に旧厚生省が喫煙率の半減を掲げようとして以来、何度か試みられてきた。そのつど、たばこ業界や、それを背景にした議員たちの抵抗で、断念に追い込まれた。今回、何とか目標を盛り込むことができ、一歩前進であることは間違いない。
だが実は、調査に対し、喫煙者の約4割が禁煙したいと答えている。12%は、その人たちが望み通り禁煙すれば達成できる目標だ。この数字に安住せず、たばこ価格の値上げなどの政策を積極的に進めて、喫煙率をさらに下げていくべきだ。
自分は喫煙していないのに他人のたばこの煙を吸う、受動喫煙を防ぐ法案が国会に提出されている。その成立のめどがたたないのも、どうしたことか。
職場での受動喫煙の害から守るため、事業者に対し、全面禁煙や分煙などの対策を義務づける労働安全衛生法の改正案で、昨年末に閣議決定された。しかし、与野党議員から「努力目標」でいいのでは、といった意見が相次ぎ、審議に入れないままになっている。
こちらもやはり、最大の反対勢力はたばこ業界である。
先月31日の世界禁煙デーに世界保健機関(WHO)が掲げたスローガンは「たばこ産業の干渉を阻止しよう」だった。
マーガレット・チャン事務局長は「たばこ産業は毎年約600万人の命を奪う殺人産業」と断じて、業界の圧力を排して対策を進める決意を明らかにした。ところが日本では、このスローガンを使わなかった。
国内でたばこによる死者は毎年十数万人、受動喫煙による死者は約6800人にもなる。命を守ることを優先するなら、政府も国会も改めてWHOのスローガンをかみしめるべきだ。
日本で禁煙の法制化が進まない背景に、たばこ産業の健全な発展を目的とする、たばこ事業法の存在がある。日本たばこ産業(JT)の大株主である政府には、たばこにかかる税の収入を確保していきたいとの意向も働く。
廃止も含めて、この法を抜本的に見直す時だろう。健康を守りたい国民の支持は、間違いなくこちらにある。
2012/06/08 がん対策基本計画を閣議決定、働く世代や小児を充実 (日本経済新聞記事)
政府は8日、今年度から5年間の目標となる「がん対策推進基本計画」を閣議決定した。2010年現在で19.5%の喫煙率を22年度までに4割減の12%に引き下げる数値目標を初めて明記。働く世代や小児のがん対策の充実を重点課題に新たに盛り込んだ。がん患者の5年生存率の平均は50%を超え、「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」を目指す。
がん対策推進基本計画は2007年に施行した「がん対策基本法」に基づき、日本人の死因トップのがんの治療体制を全国的に向上させるため5年ごとに策定する。07年に続き、今回が2回目。今後、各都道府県が同計画に基づいて地域ごとの計画見直しを進める。
喫煙率の目標値は、10年の調査で「たばこをやめたい」とした喫煙者(37.6%)全員が禁煙した場合の数字。
また22年度までに、「月1回以上」受動喫煙する機会がある人の割合を飲食店で15%、行政や医療機関では0%に引き下げ、家庭で「毎日」受動喫煙する機会のある人の割合を3%に減らす目標も掲げた。
たばこは肺がんなどのリスクを高めるとされ、本人の喫煙が影響した死亡者は10年の推計で12万〜13万人に上る。小宮山洋子厚生労働相は8日の閣議後の記者会見で「がん予防に喫煙の防止は重要な要素。数値目標を盛り込むことは大きなメッセージだ」と強調した。
計画ではこのほか、重点的に取り組むべき課題として新たに「働く世代や小児へのがん対策の充実」を加えた。
がんと診断されてから5年後に生存している割合が50%超に上昇するなか、働く世代のがん検診受診率の向上や就労支援、死亡率が上昇している女性のがん対策の充実を盛り込んだ。医薬品の承認が海外に比べて遅れる「ドラッグラグ」の解消や、小児がんの治療や相談支援の体制整備も目指す。
2012/06/02 受動喫煙防止条例 制定・検討5府県 国に規制強化注文 (朝日新聞デジタル記事)
人の多く集まる場を禁煙・分煙と義務づけ、他人の煙を吸い込む受動喫煙の被害を防ぐ条例について、朝日新聞社が47都道府県にアンケートしたところ、神奈川、兵庫が制定し、京都、静岡、島根の3府県が検討していることが分かった。
海外では国主導で公共の場での禁煙が進むが、日本では不特定多数の人が使う施設の管理者に対し、健康増進法で受動喫煙防止の努力を求めるにとどまる。国に法規制の強化を注文する声も9府県からあがった。
神奈川は全国初の受動喫煙防止条例を2010年4月に施行。学校や病院などの公共施設は禁煙、大規模な飲食店や宿泊施設は禁煙か分煙を義務づけている。兵庫でも今年3月に成立。病院、学校などは喫煙室の設置も認めない。来年4月以降に施行する。
禁止区域で喫煙すると、両県とも2万円以下の過料。神奈川では義務を果たさない管理者に5万円以下、兵庫は最大30万円以下の過料・罰金が科される。昨年10月、神奈川県が条例の対象施設にアンケートしたところ、回答施設のうち、禁煙か分煙を義務づけられた施設の8割以上が、いずれかの対策を取っていた。これまでに過料をとった例はないという。
2012/06/01 肺年齢95歳に苦笑い、舘さん禁煙呼び掛け (CBニュース記事)
5月31日の世界禁煙デーを前に、ファイザー主催の禁煙治療啓発イベントが30日、東京都内で開かれた。既に禁煙に成功している俳優の舘ひろしさん(62)は、この日会場で測った肺年齢が95歳だったといい、「これが40年間たばこを吸った結果」と苦笑い。「たばこの呪縛から自由になれるのが禁煙の素晴らしさ」と話した。
イベントには、医師による治療を受けて3か月で禁煙に成功した俳優の温水洋一さん、温水さんと夫婦役でファイザーのテレビCMに出演している女優の仲間由紀恵さんも出席。温水さんは「(禁煙後は)ご飯がおいしいし、生活も充実している」と喜び、「自分を追い詰めることなく、お医者さんと相談しながらやめられる」と禁煙を呼び掛けた。
2012/06/01 〈禁煙鎖国ニッポン:下〉「吸わないで」言えぬ多数派 (朝日新聞デジタル記事)
神奈川県大和市の女性(57)は2010年1月、夫(当時56)を肺腺がんで亡くした。22年間勤めたのは4人だけの印刷工場。社長とその娘がたばこを吸っていた。夫は「社長がヘビースモーカーなんだよ」とこぼしていた。
夫ががんと診断されたのは09年2月。翌3月、受動喫煙防止条例が神奈川県でできたのを知り、「経営者と同じ部屋で受動喫煙を22年間強いられた」と、厚生労働相への要望書を3度送った。
国がたばこの危険性を広く知らせること、10年以上にわたって受動喫煙した人が病気になったときは労災認定することを求める内容だった。
男性はその後、1年もたたずに亡くなった。
女性は労働基準監督署を相手に、夫の労災認定を求める訴訟を起こしている。担当する岡本光樹弁護士は「日本には、職場の全面禁煙を義務づける法律がいまだになく、海外から大きく遅れている。そのしわ寄せで、対策をたてない職場で働く人が苦しんでいる」と話す。
厚労省の07年の調査では、規模別でみると、10人以上30人未満の事業所が、全面禁煙の割合が高い(約28%)半面、何も対策を講じてない割合(約28%)も最多だった。
岡本さんのもとに寄せられる受動喫煙の相談は年間約50件。年々増えている。分煙が進む大企業に勤める人からは、喫煙室を開け閉めする際に漏れる煙や喫煙者からのにおいについて相談がくる。
■喫煙者不採用
日本の成人の喫煙率(10年)は男性32.2%、女性8.4%。たばこを吸わない人が全体の8割を占める。喫煙者は少数派なのだが、面と向かって「吸わないで」と言いにくい風潮がただよう。
製薬大手ファイザー(本社・東京)が5月、インターネットで全国9400人にアンケートしたところ、「吸うのをやめてほしいとはっきり言う」と答えたのは3.8%。「その場から立ち去る」「言いたいが我慢する」を合わせると92.5%だった。
一方で、喫煙への意思をはっきりと示す会社や個人が少しずつ増えている。
破綻(はたん)したリゾートの再生で知られる「星野リゾート」(本社・長野県軽井沢町、正社員約1600人)は、たばこを吸う人を正社員に採用しないと公表している。喫煙場所を作ると、その分使えるスペースが減るほか、社員の間で不公平感が生まれる、と星野佳路社長はサイトで説明する。「『ニコチン中毒の社員を企業は優遇するのか』とアルコール中毒の社員が主張したら、社員用バーを置くのでしょうか」とつづっている。
広島共立病院(広島市)でも、たばこを吸わない人を職員に採用。「禁煙も治療する病院で、たばこを吸うべきではないという考え」(総務部)からだという。
■条例が後押し
受動喫煙防止条例が施行された神奈川県では、100平方メートルを超す飲食店の禁煙が進む。全国で焼き鳥店のチェーンを展開する「秋吉」(グループ本部・福井市)の関内店(横浜市)は、6席をつぶし、喫煙室を設けた。工費は246万円。同社東京本部の島川勇治社長によると、席が減った分、年間1千万円以上売り上げが減った計算になるが、たばこを吸わない客や子ども連れから好評だという。
全面禁煙、完全分煙、時間帯禁煙の飲食店を利用者が紹介する投稿型サイト「禁煙スタイル」は、05年からの7年間で登録飲食店が3万軒近くに増えた。「多くの人が積極的に選び続ければ、禁煙飲食店は増えていく」と管理人の丸山純さん(37)。一人ひとりの積み重ねが社会を変える。(錦光山雅子)
◇
■国内のたばこ対策の歩み
2002年10月 全国で初めて罰則つきの路上禁煙条例を東京都千代田区が施行
03年5月 公共の場での受動喫煙対策を努力規定として盛り込んだ健康増進法が施行
05年2月 たばこの消費を減らすために広告や販売規制を求める「たばこ規制枠組み条約」(FCTC、日本も批准)が発効
06年4月 禁煙治療が保険適用に
08年7月 ICカード式の「成人識別たばこ自動販売機」全国稼働
10年2月 受動喫煙防止対策は「公共的空間は原則全面禁煙であるべきだ」とする厚生労働省の局長通知
10年4月 全国初の受動喫煙防止条例が神奈川県で施行。公共施設の禁煙などを義務づけ
10年10月 たばこ税を1本あたり約8.7円から3.5円引き上げ。
11年12月 職場での受動喫煙対策を事業者に義務づける条文を盛り込んだ「労働安全衛生法」の改正案が閣議決定。国会は未審議
2012/05/31 〈禁煙鎖国ニッポン:上〉漂う紫煙、規制周回遅れ (朝日新聞デジタル記事)
■職場の受動対策義務化、中ぶらりん
「毎年約600万の人々を殺している。(たばこ産業は)殺人産業であり、脅迫産業なのです」
世界保健機関(WHO)を率いるマーガレット・チャン事務局長がたばこ会社に厳しい言葉を次々浴びせる姿が、インターネットの動画共有サイトで流れている。3月下旬、シンガポールで同国の機関が開いた「たばこか健康か世界会議」で語った言葉だ。
WHOは各国にたばこ対策を呼びかけ、5月31日を世界禁煙デーと定めている。今年のスローガンは「たばこ産業の干渉を阻止する」。世界ではいま、たばこをめぐる「戦争」が起きている。
オーストラリアでは昨年12月、たばこの箱からデザインやロゴを一掃する「無地包装」(プレーン・パッケージ)を義務づける法律が成立した。今年12月からすべての銘柄の包装様式を統一し、低体重児など、たばこが原因で健康を害した人たちの生々しい写真と警告文を載せる。若者への魅力を減らすためだ。
豪政府の保健高齢化省によると、大人の喫煙率を2018年までに10%まで下げるのが目標という。英やニュージーランドも同様の規制を検討している。
豪政府に対し、「日本たばこ産業」(JT)の子会社「JTインターナショナル」など、たばこ会社は、同法の無効を訴える裁判を起こし、係争中だ。JT広報は「適切な規制はあるべきだが、歴史やイメージなど、価値あるブランドの使用まで妨げるのは違法」と、理由を説明する。
■トーンダウン
日本では公共の場などでの喫煙を禁止する法律はなく、海外と比べると、周回遅れの動きが繰り広げられている。
焦点は二つ。事業者に職場での受動喫煙対策を義務づけるかどうか、喫煙率の削減目標を国の計画に盛り込めるかどうかだ。いずれも海外では何年も前に始まっている。
昨年12月に閣議決定された労働安全衛生法の改正案は、事業者に職場の全面禁煙か完全分煙の義務規定を設けた。だが国会で審議が始まらず、中ぶらりんの状態が続いている。
4月下旬、民主党の厚生労働部門の会議で、法案の修正案が執行部から配られた。義務付けの条文が「削除」されていた。「閣議決定されたのに、野党との交渉を始める前からトーンダウンするのはおかしい」。参加していた議員から反対の声が相次ぎ、修正案は一応は白紙に戻った。
自民党のたばこ特別委員会の議員は「たばこは嗜好(しこう)品。本人の意思に任せたらどうか。砂糖やポテトチップスだって体に悪いのに、なぜたばこだけが標的になるのか」と語る。
■JTの大株主
WHOの推計では、たばこが原因で亡くなる喫煙者は年間510万人、他人の煙を吸い込む受動喫煙がもとで亡くなる人は60万人とされる。日本で対策が進まない理由はどこにあるのか。
禁煙推進に熱心な議員の一人は「いろんな理由が絡み合っている」と話す。たばこ業界や飲食業界とつながる議員や喫煙議員は、与野党にまたがる。また、財務省がJT株の半分超を持っているという事実。東日本大震災の復興財源にあてられて減るものの、国の資産としてなお3分の1が残る。「喫煙は『悪いもんじゃない』というイメージも社会に根強く残っている」
英医学誌「ランセット」が昨年9月に出した日本特集号。米ワシントン大のクリストファー・マレー保健指標評価研究所長は、経済停滞、政治の混乱、高齢化に加え、「十分ではないたばこ規制」を日本の懸念材料として挙げ、指摘した。「これらの課題に一致協力して取り組まなければ、世界の平均寿命ランキングから下がっていく可能性がある」
◇
日本のたばこ事情を2回にわたって取り上げます。錦光山雅子が担当します。
◇
■世界の禁煙政策
◇米=50州中24州で、職場や飲食店などで完全禁煙を定める
◇仏=2007年から「閉ざされた公共の空間」として建物内の禁煙を義務付け。08年から飲食店やカジノも禁煙
◇英=07年までに全域で禁煙法が施行。屋内の公共空間は禁煙に
◇イタリア=05年に禁煙法が施行。全ての屋内・公共の場で喫煙禁止。12歳以下の子や妊婦がいる場では罰金が倍
◇スペイン=06年に室内空間禁煙法が施行し、飲食店を含む多くの公共施設が禁煙。床面積が100平方メートル未満の飲食店は、禁煙か喫煙可を選べる
◇シンガポール=07年、喫煙場所規制法が改正、室内の飲食施設は禁煙。環境省の認可店では一部に喫煙コーナーも
◇台湾=09年、煙害防止法を改正。3人以上いる屋内職場、交通機関、ホテルや飲食店などほとんどの屋内の公共的施設は禁煙
※「社団法人スモークフリージャパン」のサイト(http://smokefree.or.jp/)をもとに作成
2012/05/31 世界禁煙デー 厚労省のたばこ自販機停止に (日テレニュース24)
世界禁煙デーの5月31日、東京・霞が関の厚労省では、31日から1週間を「禁煙週間」と定め、庁舎内にあるたばこの自動販売機を31日から6月6日まで販売停止とした。
厚労省の建物内は06年から全面禁煙だが、1階の屋外にある喫煙所を31日付で廃止し、省内の喫煙所は1か所だけになった。喫煙所の数は省庁ごとにばらつきがあり、防衛省内には101か所、文科省内には21か所あるという。
政府はがん予防の観点から、国民の喫煙率を10年の19.5%から、22年度までに12.2%にする数値目標を初めて盛り込んだがん対策の基本計画をまとめる予定。
2012/05/31 5月31日は世界禁煙デー がん対策に喫煙率数値目標盛り込む調整 (FNNニュース)
5月31日は、WHO(世界保健機関)の定める世界禁煙デー。たばこについて、厚生労働省では、数値目標を初めて盛り込み、今後10年間で喫煙率を12%まで下げるとする、がん対策の閣議決定を目指している。
世界禁煙デーにあわせ、厚生労働省でも、31日から1週間を禁煙週間とし、庁舎内にある、たばこの自動販売機を販売停止にした。
31日朝、青森市で、喫煙者は「キャンペーンになって、いいんじゃないですか。意識づけになってね。何もないと、なかなかそういう(禁煙する)気が起きないけど」と話した。
また全国各地で、自治体職員などが街頭キャンペーンを行い、禁煙を訴えている。
2010年の成人喫煙率は19.5%で、そのうち37.6%の喫煙者が禁煙を希望しているという。
政府は、がん対策について、6月上旬、閣議決定する予定だが、厚生労働省では、喫煙率を2022年までに12%に下げるという数値目標を盛り込むように最終的な調整を行っている。
2012/05/31 “勤務時間中は社員禁煙”広がる (NHKニュース)
5月31日は、世界禁煙デーです。禁煙について、職場では、これまで、他人のたばこの煙を吸いこむ受動喫煙を防ぐ対策が中心でしたが、最近は、企業が生産性を考慮して、勤務時間中は、社員に禁煙を求めるようになってきている、という調査結果がまとまりました。
この調査は、大手製薬会社の「ファイザー」が、インターネットを通じて、47都道府県のたばこを吸う人と吸わない人、合わせて9400人を対象に行ったものです。
それによりますと、職場の喫煙環境は、「建物内は、すべて禁煙」が33%、「喫煙室や喫煙コーナーなどがあり、分煙になっている」が47%で、合わせて80%に達し、受動喫煙を防ぐ対策が進んでいることが分かりました。
喫煙場所が職場から遠ざかるなか、勤務時間中の喫煙状況を尋ねたところ、「休み時間を含めて、全面禁煙」が10%、「休み時間だけ喫煙できる」が32%と、40%余りの人が、勤務時間中に禁煙を求められていることが分かりました。
これについて、日本禁煙学会の作田学理事長は「禁煙や分煙が進んで、たばこを吸うためにわざわざ外に出なければならず、企業にとっては、喫煙が仕事の生産性という点で新たな問題になっている。勤務中は禁煙とする傾向が、今後、強まるのではないか」と話しています。
2012/05/30 喫煙者の83%、周囲に配慮=製薬会社意識調査 (時事通信記事)
自分が吸うたばこの煙が周囲に与える影響を気にする喫煙者が83.5%に上ることが、31日の世界禁煙デーを前に製薬会社ファイザー(東京)が実施した意識調査で分かった。
調査は5月2〜14日、全国の喫煙者と非喫煙者それぞれ4700人を対象にインターネットで行った。
それによると、受動喫煙が体に悪影響を及ぼすことについて、喫煙者の93.4%、非喫煙者の96.3%が「知っている」と回答。周囲に非喫煙者がいる場合、たばこを控えるとした喫煙者は85.6%を占め、受動喫煙に配慮している実態がうかがえた。
自宅でたばこを吸う場所(複数回答)については、ベランダや庭などの室外が41.8%と最も多く、自室(34.1%)、台所の換気扇の下(33.9%)の順だった。
一方、非喫煙者がたばこの煙で不快な思いをした場合の対応では、「その場を立ち去る」が60.8%、「吸うのをやめてほしいと言いたいが、我慢する」が34.2%だったのに対し、「はっきり言う」とした人は3.3%にとどまった。
2012/04/17 血管の病気 バージャー病:6 禁煙が基本、家族も (朝日新聞デジタル記事)
バージャー病は、手足に血液を届ける中くらいの太さの血管が何らかの原因で炎症を起こし、血栓ができたり壁が厚くなったりして塞がり、血液の流れが悪くなる。国が指定する難病で、閉塞(へいそく)性血栓血管炎ともいう。国内の患者数は7千人余り。9割が男性で主に20〜40代で発症する。大半が喫煙者だ。
手足の冷たさや足の裏のしびれなどが初期の症状で、悪化すると潰瘍(かいよう)や壊死(えし)が起こり、激しく痛む。血流が良くならないと、手足や指を切断しなければならないこともある。
血流の改善には、血管拡張薬や抗血小板薬を飲む薬物療法、血管が収縮しないよう手足につながる交感神経を切る手術、新たな血行路を作るバイパス手術などがある。これらが行えない場合、骨髄や血液から特定の細胞を抽出し、患部に注射して新しい血管を育てる先進医療も近年、注目されている。
ただ、治療の基本はあくまで「禁煙」だ。東京医科歯科大の井上芳徳講師(血管外科)は「軽症なら、禁煙と血行をよくする適度な運動、保温と手足を清潔に保つケアで、快方に向かう人が多い」と話す。
欧米の報告では、禁煙した患者の9割以上は、手足や指を切断せずにすんだ。一方、喫煙を続けた患者の4割が何らかの切断を経験。日本の調査でも、喫煙を続けた人の19%が、手足の切断に至っていた。
喫煙は、バージャー病を悪化させるだけでなく、血管にさまざまな悪影響を及ぼす。
たばこの煙を吸うと、血管の内側表面にある細胞が傷つき、血栓や動脈硬化が起きやすい。煙に含まれる一酸化炭素が血液中に入ると、酸素を運ぶヘモグロビンとくっつき、血液が酸素不足になる。ニコチンには一時的に血管を収縮させる作用もあり、血圧や心拍数が上がる。
日本循環器学会などの合同研究班の禁煙指針によると、喫煙は脳卒中や、心筋梗塞(こうそく)など虚血性心疾患、大動脈瘤(りゅう)、末梢(まっしょう)血管の病気などのリスクをいずれも高める。
研究班長の室原豊明・名古屋大教授(循環器内科)は「副流煙はフィルターを通さずに煙を直接吸うことになり、もっと悪い。家族ぐるみの禁煙が大切」と話す。
2012/04/16 「勤務中の喫煙はNG!橋下市長の采配を69%以上の国民が賛成」 (マイナビニュース記事)
2012年4月3日。大阪市営地下鉄四つ橋線本町駅で、大阪市の男性助役が喫煙をした際に火災報知機が作動し、列車を停止させてしまったという事件が発生した。
大阪市と言えば、橋下徹市長による大規模な改革が行われている真っ只中。そんな状況にあってのこの問題には、当然人々の関心も集まった。
橋下市長は5日にはこの問題に対して公式のコメントを発表。「この事態は相当重い。許し難い」として助役に対して、懲戒免職を検討していることを明らかにしている。
本来ならば、これは重い処断である。自治体においても、厳密には免職処分を下す理由にはならない。
だが、橋下市長の強気の姿勢は「裁判も辞さない」という発言にも表れているように、以降も変化することはなかった。
この橋下市長の決断。国民はどのように受け止めているのだろうか?
livedoorネットリサーチ「勤務中に喫煙で懲戒免職検討、橋下市長の意見に賛成?」というアンケートの集計結果によれば、69.3%が賛成で占められていた。
およそ7割の国民が、橋下市長を支持しているということになる。寄せられたコメントを幾つか見てみると、
・一歩間違えたら「大惨事」の原因者を首にするんでしょ? 大賛成です
・喫煙、禁煙を利用者に徹底させる側の人間が自分は喫煙マナー守らないなんて大人として最悪。首が正しいかどうかわわからないが見せしめ的な効果はあると思う
・ボヤ騒ぎがあった後だからねー。大阪市、大阪市交通局・・・駄目なのばかり。
・サボリ。命令無視。常識無。 クビでいいよ。 いなくても仕事は回る。
・この質問では問題点は出てこない、喫煙が原因で非常ベルを鳴らし電車を止め会社に大きな損害を与えた事実が入れば当然クビは一般の会社なら当たり前です。公務員だから許されるはもはやだめでしょう。.
上記の通り、公務員を失職してもやむを得ないという感想が多かったようだ。また、公務員というより、社会人としての品位が欠けていたと指摘する意見も多かった。…(以下略)
2012/04/16 愛煙家は役員昇進できず? サムスン電子が禁煙強化 (中央日報記事)
サムスン電子がたばこを吸う社員に対し人事上の不利益を与える措置を取るなど、禁煙対策の強化に動いていることが16日、分かった。
業界によると、サムスン電子は13日にDS(デバイス・ソリューション)事業部門の社員宛てに、喫煙者は役員への昇進と海外駐在員や海外地域専門家の選抜において、不利益を受けることになるとの内容の電子メールを送った。DS部門の全社員から禁煙の誓約書を受け取り、チーム長など幹部のうち喫煙者については喫煙有無の検査を毎月実施することにした。同社関係者は「公式的な言及はなかったが、喫煙者は役員昇進が事実上困難とみてよい」と話した。
こうした措置の対象はまだDS部門だけだが、この先、全事業場に禁煙強化のムードが広がると予想される。
会社関係者は「社員の健康を増進させ、安全かつ快適な勤務環境を整えるため、DS部門で禁煙化を積極推進中」と説明した。禁煙エリアで喫煙した人に懲戒的な不利益を与えるよりは、海外駐在などのチャンスを減らす方向で、禁煙を勧めるという。
2012/04/13 メンソールたばこ、脳卒中のリスクが2倍以上=研究 (ロイター記事)
米内科学会誌「アーカイブス・オブ・インターナル・メディシン」に発表された研究で、メンソールタイプのたばこを吸う喫煙者は、他の喫煙者に比べ、脳卒中になるリスクが2倍以上であることが明らかになった。
カナダ・トロントにあるセントマイケルズ病院のニコラス・ボゾリス氏がまとめた研究では、2001─08年に米国で実施された、健康や生活スタイルに関するデータを調べた。データの対象となった5028人の喫煙者のうち、普段メンソールタイプを吸う人は約26%だった。
それによると、メンソールの喫煙者のうち脳卒中を起こした人は3.4%、それ以外の喫煙者では2.7%となった。これに年齢、人種、性別、喫煙本数などを考慮に入れて分析すると、メンソール喫煙者には他の喫煙者よりも2倍以上の脳卒中リスクがあることが分かったという。
また、性別では女性が、人種別ではアフリカ系でない人たちの間でこの差が特に顕著となり、脳卒中リスクは3倍以上になったという結果も示された。
2012/03/29 がんの半数は生活習慣の改善で予防可能、米研究 (AFPBB News記事)
【3月29日 AFP】全てのがんの約半数は健康的な生活をすることによって予防可能だとする論文が、28日の米医学誌「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン(Science Translational Medicine)」に発表された。
これによると、米国の死亡原因としてがんは心臓病に次いで2番目に多く、2012年には163万8910件の新たながん診断が下され、57万7000人ががんで死亡すると予想されているが、運動や食習慣の改善、禁煙を心がければ、がんによる死者が全体で半分になる可能性があるという。例えば、米国での肺がんの4分の3は禁煙によって予防できる可能性があるという。
米国の全てのがん発症件数のうち約30%は喫煙に、約20%は肥満に原因があるとされている。医療費と生産性の低下分を合わせると、がんは米国に年間2260億ドル(約18兆7000億円)の経済的負担を負わせている。
子宮頸がんや肝臓がんは原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)や肝炎ウイルスのワクチン接種によって、皮膚がんは太陽光からの保護対策をすることによって予防可能であることがこれまでに示されている。社会全体がこういった対策の必要性を認識し、健康的な生活習慣を定着させるために真剣に努力しなければいけないと研究チームは訴えている。
■政策も含めた社会全体の取り組みを
研究チームを率いたミズーリ(Missouri)州セントルイス(St. Louis)のワシントン大学医学部(Washington University School of Medicine)サイトマンがんセンター(Siteman Cancer Center)の疫学者グラハム・コルディッツ(Graham Colditz)氏は「すでに知られている対策に投資すべき時だ」と指摘する。
しかし、がんは予防できるということに対する懐疑的な見方もあって、がん予防の浸透には数々の障害が立ちはだかっている。がん研究の多くは予防ではなく治療に焦点を当てたもので、長期的対策よりも短期的な視点になってしまう傾向もある。さらに事態を難しくしているのが経済格差で、貧しい人々は裕福な人々よりも高いがん発症のリスクにさらされがちだ。
論文の共同執筆者で、同大の医学部とジョージ・ウォーレン・ブラウン社会福祉大学院(George Warren Brown School of Social Work)で人種と民族の多様性について教えているサラ・ゲーラート(Sarah Gehlert)教授は、この大きな社会的不均衡を克服するには政策を変えることが不可欠だと話している。
「公衆衛生分野での25年の経験から私が学んだことは、人々の健康を改善するには政策の変更が必要だということです」とゲーラート教授。「喫煙に対する規制強化はそのよい例です。ですが、私たちだけで政策を変えることはできません。私たちは事実を人々に伝えることはできますが、もっともっと多くの人が政策変更の必要性を強く訴えることが必要なのです」
2012/03/19 学校・病院・官公庁は喫煙室× 兵庫県禁煙条例が成立 (産経新聞記事)
学校や病院の全面禁煙を義務付ける兵庫県の受動喫煙防止条例(禁煙条例)案が19日、県議会で可決、成立した。施行は平成25年4月。同様の禁煙条例は神奈川県に次いで全国2例目。
病院や官公庁などの喫煙室設置を認めた神奈川県より厳しい規制となる。
違反施設には勧告し、従わない場合は30万円以下の罰金。禁煙区域で喫煙した個人も2万円以下の過料。分煙施設の導入期間を考慮し、民間への条例適用は26年4月とした。
兵庫県は当初、民間施設にも全面禁煙を義務付けることを検討したが、業界団体の反発を受けて規制内容が後退した。
※赤字部分は当方の追加・注記・コメントです。